軸組工法では例外なく「通し柱」がありますし、法律でも「通し柱」を設けろ・・と書かれています。では、このなじみ深い「通し柱」多いほど良いのでしょうか、という疑問が生まれてきますが、答えは「NO」なのです。
もっともこの問題は見解に個人差がある問題なのですが、私は次の理由から「NO」と考えています。
柱の断面欠損
軸組工法はご承知のように、木材を凸凹状に加工して組み合わせます。伝統的な工法なのですが、これも欠点があります。それは、写真Aのように加工した梁の出っ張りを柱の中に入れるために、柱は逆に削り取って行かなくてはなりません。
写真Bのようにもし、梁が4方向から来ると、柱の断面は無いに均しい状態になってしまいます。この状態を断面欠損といい、強度的にも弱くなっています。
通し柱は120mm角以上
上の問題を解決するために、通し柱は他の柱よりも太くすることが一般的に行われています。普通は105mm角の柱を使う場合がほとんどですから、通し柱は120mm角の柱がよく使われます。
逆に105mm角の通し柱は、断面欠損という意味ではむしろ危険な配材と考えた方がよいでしょうね。
倒壊する場所
建物は、写真Cのように1階と2階の境目当たりでポキッと折れる場合がほとんどです。1階の途中から建物が倒れました・・なんて状態は見たことがありません。
この現象は通し柱とは直接関係ないかも分かりませんが、通し柱があるから大丈夫という仮説は成り立ちません。むしろ断面欠損が多くなるほど弱くなりますから、通し柱のもつ意味は薄れていきます。
断面欠損にならない金物工法
上の断面欠損を無くそうと言うことで、写真Dのような金物で梁と柱を固定する工法も使われ出しています。これで通し柱本来の強さが戻ってきますが、コストがかかるのか、まだまだ普及していません。
(私の感覚的な印象では普及率は1割程度ではないでしょうか)
耐震性はどうなる
時々、非常に間違った誤解をもったまま説明している工務店がいますが、通し柱は耐震性にはほとんど寄与していません。通し柱をたくさん設けているから地震にも安心・・という説明は真っ赤な嘘。と言うよりも何も知らずに無知な説明している工務店と考えて方がよいですよ。
なぜなら、耐震計算のときに通し柱の有無は計算対象に含まれていませんし、中古住宅の耐震診断をする時にも通し柱の有無は評価の過程でも含まれていないのです。
現在は伝統工法の良い部分はほとんど取り入れられていませんし、現代社会でそれを使うことには経済的に不合理な側面があります。しかし、建物の用語は昔からの古来の用語を用いています。そのため、「通し柱」もその言葉だけをとれば、なにか御利益がありそうに聞こえますが、現実にあまり劇的な効果など、今は残っていないのが通し柱の位置づけと考えた方が良いと思っています。
なぜ残っているのか
それはたぶん、建築を仕事としているもの誰もがいだく心理的抵抗感だけではないでしょうか。いわば盲腸ですね。あっても良いが、無くても支障ない。しかし、無いとどうも気になる・・。
- 通し柱は耐震性に寄与するのか・・NO
- 通し柱は多いほど良いのか・・・・そうでもない
- 通し柱は105mm角で良いのか・・・・NO 。