釘よりもビスの方が強いんだ~という誤解を多くの人が持っています。
それは、何かものを止めたときに釘よりもビスで固定した方がしっかりする・・という印象をもとに思われていることのようなのですが、この誤解は、ある面で正しく、ある面で間違っているところがあります。
右の図のように、釘とビスには大きな役割の違いがあります。
釘は、物と物を止めたときの横方向の力には強く抵抗するのですが、ビスほど、上下方向の動きには強くありません。
反対にビスは、横方向の動きには弱いのですが、上下方向の動きには強く抵抗出来ます。
このため、物と物を止めると、ついつい釘やビスの上下方向に引っ張って、やっぱりビスの方がしっかりしている・・という印象を持ちがちです。
しかし、構造用合板などを使った耐力壁も、地震や台風があると動きは釘に対して左右方向の動きをするので、ビスよりも釘を使った方が、より強い壁を作ることが出来ます。また、同じ長さであれば、釘よりもビスの方がその直径が細いために、結果として釘の方が強いのです。
そして、もっとも多い誤解は床です。
時々大工さんが、床は釘よりもビスの方が強くて良いんだ~といった誤解を持っている方が多いですが、地震などがあれば床の釘に対して水平の動きをしています。そのため、床に合板を打つときも、ビスではなく、釘の方が強い床を作ることが出来ます。
ただ、床鳴りなど床材が上に持ち上がったりするような時は、ビスで固定した方が安定するために、そのことを錯覚して、ビスの方がよい・・と考えているようです。
そして、釘の強さはその釘の直径に、完全な正比例をしています。前回、所定の釘を使わなければ・・と言ったのは、要は所定の直径の釘を使わなければ、所定の強さが出ないと言うことに他なりません。
適材適所。その部材にかかる力の種類に応じて、釘とビスを使い分けるのがプロのプロたる所以なんですが、こういう基本的な事を知らない大工さん、建築会社が、とにかく釘を打っておけば良いんだ~と表面的な事だけを覚え、規定以下の細い釘を打ったり、釘の間隔が広すぎたり・・と欠陥工事を作り出していることが多いですね。