古人の知恵:崩落するためにある土壁

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「木と紙の家」と西欧人から揶揄された日本家屋ですが、実際には「木と土と紙」で作られた家です。

「木」は、文字通り柱や梁あるいは屋根、外壁材、床材に使われた木材。

「土」は、今日ご紹介する土壁。「紙」は障子や襖などの建具ですね。

今回は、その土のお話しですが、以前、土壁で作られた2階建ての住宅の実物大振動実験が行われました。その建物は柱は150mm角で作られ、柱、梁共に杉を中心に建てられましたが、実験の結果、震度7の阪神大震災を想定した地震力で揺らしても、壁が割れたり、一部の柱が割れたものの、建物は倒壊を免れ建っていました。(下の写真。また、基礎はなく、石の上に建物を載せた昔の造りです)

壁のほとんどが割れて多数が滑落し、建物の変形は2階の屋根で60cmも左右に揺れ、柱も何本も折れたようですが、地震が終わった後は、下の写真のように、ほぼ元の状態に戻っています。(写真左は地震が収まった後の様子。写真右は、地震を受けて損傷が始まったときの壁の様子)

いわば、ヨットのように大きく揺れるけれども、復元力が強く、元に戻るのが土壁を使って建てられた昔の日本家屋の特徴です。

それは、地震を受けたときに土壁が壊れていることによって、地震のエネルギーを吸収し、その時に建物の傾きは大きくなるけれども、決して倒壊しないし、ほぼ元の姿に戻っていたのです。

そして土壁は、もう一度壊れた土を集めた練り直せば改めて使うことが出来ます。壊れた柱などは取り替えれば、その建物はまた、元のように使うことが出来ます。

もちろん、土壁は当時としては土蔵にも使われているように、高い断熱性能もあり、日本特有の高温多湿な梅雨時の湿気をすってくれる優れものです。

次のページの瓦もそうですが、自然に抵抗しようとせず、流れを受け止めずに流すことで自然に対処しようとしたのが昔の日本人だったと思います。

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