いろいろな事情により、私たちは業者を決めていきます。
たとえば、とにかく安いという価格重視、あるいはこの立地が気に入ったという立地重視、少し高いけれども大手だから安心指向、熱心な営業マンに任せようという気になったという人情派などなど、必ずしも業者の質の優劣のみが業者選定第一の条件ではない場合も多いです。
他の条件が優先するから、多少のルーズさは仕方ないと目をつぶり、あるいはみんながみんな悪い業者ではないだろうし、この業者が悪いことをすることはないだろうという期待を込めて契約に至る場合もあると思います。
また、建築主には、一つの心理パターンがあります。それは、
人を疑うことは悪いことだ、相手にも失礼と言った罪悪感のような気持ちを持っています。それは善意の強い人ほど強くもつ傾向があり、言い換えれば、自分は人に善意を持って接しているのだから、当然相手もそうしてくれるものと思う気持ち。大きな意味では日本人特有の同胞意識です。
あるいは、最終的に建築会社を決めるまでは、大いに悩み、各社に対して多少の疑心暗鬼もありますが、一旦建築会社が決まれば、その会社に全幅の信頼を置いてしまうという心理です。
それが、建築会社を決定するまでの膨大な作業量から解放される開放感からなのか、あるいは、親身に相談に乗ってくれる営業マンへの信頼感からくるものなのか、あるいは、その土地、その価格にはまってしまった「呪縛」からか、はたまた、自分が決めた業者が悪いことをするはずが無いという無意識の期待からなのか分かりませんが、建物の完成まで業者に対して疑心暗鬼でいる人はいません。
しかし・・・・。
一定の率で必ず発生するトラブル
住宅業界は大小零細のいろいろな規模、考え方をもつ業者が入れ混じる玉石混合の業界です。その中には良心的な業者もいれば、自社のことしか考えていない業者。あるいは平気で法律を無視して違法な工事を行っている悪質な業者も存在しています。
そのため、どんな理由で業者を選ぼうとも、工事トラブルは一定の頻度で必ず発生すると言ってよいでしょうし、それは、欠陥工事であったという悲劇的なものでなくても、「言った。聞いていない」「約束が違う」「説明したとおりに工事をしていない」というどちらかというと信義則に反する小さなトラブルも数限りなく発生しています。
- そのようなトラブルから自分の身を守るにはどうしたらよいのか。
- 泣き寝入りをしないためにはどうしたらよいのか。
- 自分有利に事(交渉)を進めるためにはどうしたらよいのか。
このページではそういう部分を解説しています。
最低限の業者の選別方法
そのまえに、最低限の業者の選別方法を知っておきましょう。
1)建設業許可を取得していること
意外に思われるかも知れませんが、床面積150㎡以下の木造住宅か、1,500万円以下の工事を請け負う場合は、建設業許可を取る必要がありません。つまり、誰でも○○工務店と名乗って仕事が出来るというです。
それ自体は違法でもなんでもないのですが、著者が関わった欠陥住宅の事例では、重大な欠陥工事を行った業者で、かつ、絶対に自らの非を認めない業者のほとんど全てが、実は、建築業許可を取っていないという実態があります。特にローコストで建物を請け負うというタイプの業者にこのようなタイプが多いですから、注意が必要です。
2)資料による説明が十分であること
もう一つの傾向は、欠陥工事をしなくても、「言った聞いていない」「事前の説明と違うことをしている」といったいわば信義則にもとるようなことをしている業者にも、小さなトラブルが多く発生する傾向があります。そして、そういう業者の多くは、建築主に提供する資料が非常にわずかだという傾向があります。
ここで言う資料とは、立派なバンフレットが揃っていると言うことではなく、カタログを見せて十分な説明をしてくれたり、仕様書がキチンと整っていたり、あるいは図面や議事録が作られている事を言い、もっともトラブルが多いのは 、
- ほとんど議事録を書かず、口頭説明で済ます
- 説明はするが、具体的な資料は見せない
- 間取り図だけで契約を求める
といった人生最大の契約をするのに、わずかな1枚の間取り図だけで説明を済まし、契約しようとする業者が起こすトラブルがあとを絶ちません。
上に関連することですが、彼らほど(悪質になるほど)弁が立ち、資料など無くてもあたかも言っていることの全てが真実だと錯覚してしまうほどの弁舌技術を持って生まれたものとして備えています。(だからこそ、信用してしまうのですが・・)
トラブルは、一定頻度で発生する