
■最高裁の判決理由
C建築士の上告を棄却した理由を最高裁は次のように述べている。
(注:判決本文ですが、こちらで少し読みやすく改変している部分があります)
■建築士法では,建築物の新築等をする場合,各規定に定められている一級建築士、 二級建築士又は木造建築士でなければ,その設計又は工事監理をしてはならない旨を定めている。
■建築士法5条の2の規定は,各規定に定められている建築物の工事は,建築士の設計によらなければ,することができないこと。
■ その工事をする場合には,建築主は,各規定に定められている建築士である工事監理者を定めなければならず,これに違反した工事はすることができな
いことを定めており,これらの禁止規定に違反した場合における当該建築物の 工事施工者には,罰則が科せられるものとされている(法99条1項1号)。
■そして,建築士法18条の規定は,建築士は,その業務を誠実に行い,建築物 の質の向上に努めなければならないこと(同条1項)
■ 建築士には,法令又は 条例の定める建築物の基準に適合した設計をし,設計図書のとおりに工事が実施されるように工事監理を行うべき旨の法的責務があることを定めている(同
条2項,3項)。
■ 建築士法及び法の上記各規定の趣旨は,建築物の新築等をする場合における その設計及び工事監理に係る業務を,適切 に行い得る専門的技術を有し,かつ,法令等の定める建築物の基準に適合した設計をし,その設計図書のとおりに工事が実施されるように工事監理を行うべき旨の法的責務が課せられている一級建築士,二級建築士又は木造建築士に独占的に行わせることにより,建築される建築物を建築基準関係規定に適合させ,その基準を守らせることとしたものであって,建築物を建築し,又は購入しようとする者に対し,建築基準関係規定に適合し,安全性等が確保された建築物を提供することを主要な目的の一つとするものである。
このように,建築物を建築し,又は購入しようとする者に対して建築基準関係規定に適合し,安全性等が確保された建築物を提供すること等のために,建築士には建築物の設計及び工事監理等の専門家としての特別の地位が与えられていることにかんが
みると,建築士は,その業務を行うに当たり,新築等の建築物を購入しようとする者に対する関係において,建築士法及び法の上記各規定による規制の潜脱
を容易にする行為等,その規制の実効性を失わせるような行為をしてはならない法的義務があるものというべきであり,建築士が故意又は過失によりこれに
違反する行為をした場合には,その行為により損害を被った建築物の購入者に対し,不法行為に基づく賠償責任を負うものと解するのが相当である。
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