
●あこがれの大空間を作ったものの!!
手広く事業をやっていた私のお知り合いが家を建てました。その方とは、店舗設計でのおつきあいだったので住宅の設計や工事はしていませんが、ある時新しく建てられた住宅の事が話題になり、
「良い家になりましたか」 と私が尋ねたところ
「やっばり、広すぎるリビングはダメだよ。8帖のダイニングにこってりと座っているよ。。。」という返事でした。
「どうして・・」と尋ねると、その方曰く
「いや〜。雑誌に載っている広いモダンなリビングにあこがれて30数帖の大きなリビングを作ってみたものの、なぜかスースーした感じで落ち着かなくてねぇ。せっかく暖炉も作ってみたんだが手間もかかるし、やっばり、こじんまりした小さな部屋の方が落ち着くよ。」
という返事だったのです。
この手の話、人には決して「広すぎた〜。失敗した〜。」なんて言わないでしょうが、よくある話なんです。インテリア雑誌やテレビでは、モノ一つ無いオシャレでモダンなリビングやキッチン、あるいは寝室といったものを演出しています。
だれしもそんな空間にあこがれます。
でも人間には、「落ち着くのに適した空間の広さ」があり、「ある程度のざわめき感」というものが必要なのです。それを無視してしまうと逆に全く落ち着かない空間、結局使わない空間になってしまうのです。
では適切なサイズとは何でしょうか。私は昔で言う4帖半だと思っています。これは布団を使って就寝する場合の日本人の適切な一人サイズなんですね。ベッドを入れる場合は6帖の部屋でしょうか。
だから今もって、子供室(洋室)の基本的な部屋は戸建て住宅もマンションも6帖が基本になっています。つまり普遍的でオーソライズされた広さなのでしょう。もっとも、マンションの場合はきれいな6帖はとりにくいので5.7帖といった歪な広さですが、それでも一生懸命6帖に合わせようとがんばっているのですよ。
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写真や雑誌、あるいは家具のパンフレットに載っているインテリア写真も、「広い空間という夢」を売っているだけで、実際の生活にはマッチしないのです。
●多目的室の効用
最近では2階の階段スペースなどに、ホビールームや多目的室、フリースペースといった表現で多用途に使えるオープンなスペースを配置している例が多いですが、このような考え方も将来のライフスタイルの変化には良いことです。
実際に若い頃からの趣味をずっと続けている人もいれば、新しい地域で新しい友達と出会い、新しい趣味を始める人も多くいるでしょう。
「あぁ。せっかくパッチワークを始めようと思ったのに、散らかしておける場所もない」では、困りますね。そういうときには、最初に計画しておいた多目的コーナーも大きな強みを発揮することになるでしょう。
でも、このようなコーナーも実際に使用するためには、エアコンなど”空間が快適になる装置”を付けていないと、”ただの暑い、寒い大きな廊下”のコーナーに成り下がってしまいます。
上の「あこがれの大空間を作ったものの」で書いているように、せっかく作っても広さだけでなく「快適に過ごせる装置」も必要なのですよ。
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