


耐震性は価値判断
法律は最低限のことしか書いていません。それをクリアすれば法律上の瑕疵はありません。
しかし、どんな性能の建物を設計しているのか。あるいは売っているのか。そして、求めているのかは、それぞれの人の価値判断です。
なぜなら、法律を基準とするなら、1000ccだけの自動車があればよく、1500ccの自動車も2000ccの自動車も必要ないのですから。

もし、
建築基準法ギリギリの耐震性しか備わっていない建物だったら。
『あなたの考え方は、地震を受けたときに建物の下敷きにはなって人間が死ぬことはないが、建物は大きな被害を受け、莫大な補修費用が必要かも知れない。という建物なのですね』
という軽〜いジャブを相手に投げかけてみましょう。
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世の中で、耐震性やその基準が曖昧なのは、同じ耐震性の建物でも、建物の形状や間取り、耐力壁のバランス、地盤の強さなど、建物の耐震性以外の要素も影響するために、計算式のように一律に論ずることが難しいという面もあります。
しかし、もっと大事なことは日本語の曖昧さなのです。
『大丈夫です』という言葉は、実は、その言葉を言う人と、受け止めた人の解釈次第なのです。でも、より詳しく提示した資料があります。

・基準法ギリギリの耐震性とは。
性能表示制度にある耐震等級の説明の中で次のように述べられています。

赤字の部分の日本語を正しく読解してみましょう。
震度6強から震度7の地震に対して、倒壊せず、崩落せず、と書かれています。これをわかりやすい言葉に置き換えると、
震度6強から震度7の地震に対して、建物が倒れ落ちず、崩れ落ちない程度の強さ・・・ということですね。
左の写真の状態では、 全壊判定となるのでしようが、少なくとも、倒壊はせず、崩壊はしていません。 人は死にません。
つまり、建築基準法ギリギリの耐震性とは、地震を受けたときに建物の下敷きにはなって人間が死ぬことはないが、建物は大きな被害を受け、莫大な補修費用が必要かも知れない。という基準なのです。
そのような建物を設計し、あるいは販売しているのに、『大丈夫です』という言葉で、売り手も買い手も納得してしまう日本語の曖昧さ。そして、法律の曖昧さ。さらには、その基準の意図を誰にも明確に伝えない国の曖昧さが耐震性の話をよりわかりにくくしているのです。
震度6強から震度7の地震に対して、建物が倒れ落ちず、崩れ落ちない程度の強さ、人間が建物の下敷きにならない程度の強さを妥当とするかどうか、それはあなたの判断です。
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