
■ご祝儀コミュニケーション(2008.01.15)
最近は地鎮祭や上棟式といった建物を建てるときに行う式典をする人が少なくなってきています。上棟式などは、多くても数パーセント、地鎮祭も2割も無いかも知れません。(もちろん、地域によっても違いますが)
地鎮祭は、その土地の守護神を祀って土地の安定と工事の安全を祈願する儀式。
上棟式は、家屋の守護神、工匠の神を祀り、新しい家屋を祝福し、職人をねぎらい、今後の工事の無事を祈願する儀式ですよ。
昔は地鎮祭と言えば、それを建てる棟梁も出ていましたし、棟梁自身が請負の元締めをしていたのですから当然ですね。でも、最近は、請負形態が昔とは変わりましたから、地鎮祭に棟梁がでる、ということは無くなり、施工会社の社長あるいは偉いさんが出席するのがほとんどですね。(もちろん、設計事務所に設計を依頼した場合は、設計事務所も参加します)
さて、いよいよ工事が始まる時々のご祝儀・・・
気になる人は気になりますね。
気にしない人は全く気にもしないのが、このご祝儀なんですね。
ご祝儀というも、「どうもなんなんですが・・」と口ごもりますが・・要は相手への心配りをした方が良いのかどうか、ということですね。
といっても、地鎮祭は神主さんへのお礼ぐらいで、特に他の出席者にご祝儀を出す必要は無いのですが、気になるのは、その後、工事に入ってからの大工さんなどへのご祝儀です。
家は大工が建てるのだから、棟梁に何かお礼をしたおいた方が良いのだろうか。
ご祝儀や謝礼などをしないと手を抜かれるのだろうか。
するならどのぐらいの金額が良いのだろうか。
いつ頃渡したらいいのだろう。
『気にしい』さんは、いろいろ考えてしまいますね。
そういうわけで、この問題を少し掘り下げて見てみましょう。

■ご祝儀と手抜き
時々、大工さんなどに「ご祝儀」を上げないと「手抜き」をされるのではないか。とぼんやりですが考えている方がいます。あるいは、「ご祝儀」を上げることによって「良い仕事」をしてもらえるのではないかという風に、「ご祝儀を上げること」=「仕事の善し悪し」に比例するかのごとく考えている方もいるようです。
でも、この考え方は、はっきり言って大きな間違いでしょうね。
仕事に手を抜くかどうかは、「ご祝儀」や「謝礼」をする。あるいは「お茶出しをする。」といった建築主の行為とは全く関係なく、その大工や職人の性癖、棟梁の性癖、もっと言えば工務店の資質そのものとも言うべきもので、建築主の方の行為の有無で仕事の善し悪しが変わるものではありません。
それを言い出せば建売住宅、マンションなど誰が入るか分からない建物は手抜きのオンパレードになってしまいますね。
また、工務店の言う値段(工事費)をケチったら手を抜かれるのではないか・・これも非常に多くの方が抱いている気持ちですね。
でも、これも間違いです。
■値引きと手抜き
そもそも、工事費を値切られて手を抜くような会社は、その程度の信義しか持ち合わせていないモラルレベルの低い会社ですし、その程度の大工や下請けしか持っていない会社なのです。
工事費を値切られたから、その仕返しで工事の手を抜くという馬鹿げたことは、普通の会社ではしません。自社が了解して契約したのですから、契約時の丁々発止の出来事はそれで終わったことです。
■ご祝儀と手抜き
さらに言えば、「ご祝儀」をもらわなかったから、仕事の手を抜くなど、それこそ「人間失格、社会人失格」ですね。あなたが社会人ならそう思うでしょ。
この業界は、数万社の工務店と数十万人の大工、それ以上の職人達がいます。これだけ多くの会社や人がいれば、悪い性根をもった人間失格、社会人失格のようなヤカラもいるでしょうね。それは仕方のないことです。
でも、大多数の会社や大工、職人も「祝儀」や「謝礼」の多寡で仕事の質を変えるほど馬鹿な人達はいませんから、「ご祝儀」と「手抜き」を結びつけるのは、いささか想像力の発揮のしすぎでしょう。
でも、人間は感情の動物であることも事実です。
「謝礼」という気持ちをもらってうれしく思わない人は決してありません。
では、どういう方法が効果的なのでしょうか。
そして、意外にもご自身の心の持ち方で使い方、感じ方が違ってくるのです。

■「ご祝儀」3つの気持ち
さて。ご祝儀について書こうとしていると、フッと「なんでご祝儀を渡すねん??」と素朴な疑問が湧いてきました。
もちろん、昔(戦前以前)、棟梁と言われていた時代は、家造りのすべてを棟梁が取り仕切っていましたから、その棟梁に「ご祝儀」を渡すしきたりがあったのは分かりますが、今は、本当の意味の棟梁はいなくなりました。
大工というのは住宅工事の中心ですが、今では一つの職種に過ぎませんし、棟梁と言われるほど尊敬もされ、腕もたち、大勢の子飼いの大工の面倒を見て、すっげぇ太っ腹だぁ〜なんて絵に描いたような人もいなくなりました。
では、どうしてみなさん、「ご祝儀」を渡すの。あるいは渡すべきか・・と考えるの???とふと、手が止まりました。
そして、フツフツと次のような事が浮かんできました。
★私の仮説その1。「医師への謝礼」と同じしきたり説
最近でこそ、手術をしても入院期間も短くなり、主治医の先生に気を使って「謝礼」をするような慣習も少なくなったと思います。
それでも、入院すると、少しでも自分の病気を治して欲しい。あるいは「謝礼」を渡すのが、昔からのしきたりかしら・・等と悶々と考え、「謝礼」はいくらぐらい包むのが「相場」なの?となぜか「相場」という言葉が飛び出すような気持ちから、主治医の先生や病棟詰め所に「謝礼」や「付け届」をする事が多いですね。
つまり、これかぁ・・・・。
大工と医師は同じように、「私にはよくしてね。ね。」的お願い、あるいは「しきたり」から渡そうと考えているのでしょうか。
★私の仮説その2「手抜きせんといてなぁ、お願い」説
上でも書きましたが、業界の悪しき風評として「手抜き工事」の印象が根強い。だから、「お願い。私の所ではせんといてね」・・
う〜ん。まるで誰も手抜きをしているような気にされる。
でも、実際に「ご祝儀」を渡す理由としてそういう問い合わせをされる方もいますから、真剣にそう思っているのでしょう。
そうそう、この業界はなんせ「名の知れた悪徳業界」やさかいな。。。
そうでっか。「謝礼」の理由は・・・
★私の仮説その3「あくまでも感謝」オンリーワンよ。説
よく考えれば、大工というのは、実はその家を建てるとき(上棟)から仕上げの最後まで、たった一人の大工が仕上げるんですね。
つまり、あなたの家を造るのに、一人の大工さん、オンリーワンな訳です。言い換えれば、大工さん独り占め・・・なんですね。
1件の家に大工が2人いても、あくまでも上下関係のあるコンビで来ていますから、やはりオンリーワン。その時間は、のんびりペースで2.5ヶ月、ハイスピードで1.5月です。その間独り占め〜だよ。よくよく考えれば、ある依頼のために、ある人を独占出来るのは、「大工さん」くらいかも・・・
自動車は分業生産。ツァーといってもコンダクターは独り占め出来ない。たしかに、ある人を独り占め出来る依頼事ってなかなか無いんですね。
まぁ、時間単位の趣味の何かの個人レッスンはありますが。。
だから「感謝の気持ちを込めて」 それも悪くないですね。
そういえば、建築主の方から「良い大工さんに当たって欲しいんですけど、こればかりは。。。」そういうお気持ちをいただくときがあります。
そやなぁ。一生に1回の家造り。オンリーワンの家は、ええ大工に作って欲しいわなぁ。
もっとも、こんなアホなこと書いても私のひとりごと。
「ご祝儀」頂くのはうれしいことやでぇ〜。
もらう側は、私のようなアホな詮索をしてもらっていませんから、やる側は素直に「ご祝儀」あげたってぇ。。。
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