階段を上下したり、廊下を歩くと建物が揺れる感じがする。というお問い合わせ。
建物が揺れる。というのは、感覚的なことなので、どの程度かはわからないため、現地調査をする前に、とりあえず図面を送って頂きました。
幸いにも、建売住宅(売建て)にもかかわらず、地盤調査書や構造図や構造計算書が一式残されていたため、まずは、地盤が弱いのではないかと疑ったが、そうではなく、構造図を見ていると意外な部分を発見した。
下の図は、それを簡単に表したものですが、2階や3階の荷重がかかる梁に、それに応じた大きさの梁が設けられておらず、普通の1つの階の床を支えるだけの大きさの梁しか設けられていなかったのです。
Aの部分は、2階、3階の床や壁、屋根の重さが加わる。
Bの部分は下に壁があり、壁が上の重さを支えてくれるため、大きな部材はいらない。
Cの部分は2階の床を支えるだけでよい。
しかし、図面では、Cと同じ程度の大きさの梁しか設けられていなかった。
そのため、歩くたびに梁がたわみ、体に感じる揺れを生じさせていたのである。
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案の定、構造計算書をチェックしても、その梁の必要寸法を計算した部分は無く、ただ、単に設計者が、上に建物が載っていない普通の床の状態と勘違いして図面に普通の細い梁を書いてしまい、そのまま施工されてしまったものでした。
この建物は、併せて10軒程度の3階建て住宅が並ぶミニ開発ですが、普通、3階建ての構造計算は、構造計算を専門とする構造設計事務所に外注するのが一般的です。
たぶん、構造設計者は、受注した多くの物件の処理に追われ、十分なチェックも無く仕事をこなしていたのでしょう。このような物件の多くは、早く、安くが発注者(売り主)から求められる命題となっている場合がほとんどですから。
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