CM方式:業者からみると

前ページでは、CM方式を担う「建築士」をみてきました。
では逆に、工事を担う下請業者からみるとどうなのでしょうか。

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スポットの仕事か VS 安定した得意先か?

世の中それほど景気は良くありませんから、下請業者からすれば、仕事は出来るだけ安定した取引先が良いですね。

たとえば、CM方式では、ほとんど一人の建築士がプラン提案から図面作成、見積もり、発注、工事監理と八面六臂の活躍をしないといけませんから、一人が年間にできる仕事量は、たかがしれています。
対して、営業と設計と工事に分業化した工務店では、たとえば3人の人間を抱えていれば、3倍の人間がいるのですから、CM方式の一人の建築士がこなす量の3倍の仕事をこなさないと食べていけません。

確かに一人より三人の方が売上的には大変なのですが、しかし、その下でそれぞれ仕事をする専門業者(下請)からすると、工務店から仕事をもらう確率の方が、CM方式の建築士から仕事をもらう確率よりも高くなる。

しかも、工務店は一度仕事を気に入ってもらえれば、そして、価格が妥当であればそうそう他社に浮気はしませんが、CM方式では、一応「透明性」がうたい文句ですから、同業他社と見積もり競争になる。
つまり、1/3の確率よりも、さらに確率は悪くなる。

たとえば塗装屋は、3人でやっている工務店からは年間9件の仕事が来る。
しかし、CM方式は年間3件の仕事に声はかかるけれども、競争なので全ての仕事が取れるかわからないと言ったことになります。

つまりは、CM方式の仕事は、スポット的な仕事としてとらえるのは良いのですが、自社のメインの取引先とはなり得ない。

気心の知れた仲間 VS 知らんヤツと合番(あいばん)になる

というほど大げさな仲間関係はないにしても、いつも仕事をさせてもらっている工務店の出入り業者はほとんどが顔なじみなのに対して、CM方式では、時として知らん顔のヤツと合番になる。
そうすると、工務店の場合は誰がゴミを残したか一目瞭然だが、CM方式では現場にゴミを残していてもお互いに知らん顔・・。
( 合番(あいばん)とは、同じ現場で違う職種の人たちが同時に仕事をすること、大工と電気屋が同じ現場で仕事をしている・・といった状態のこと )

もっもと、だからといって、ほとんどの業者は上の2つの理由のために、変な仕事をするとか、手を抜くと言うことは普通はしないのですが、やはり、小さな部分では、誰の残したものなのか、不明なゴミが最後まで現場に残ってしまうとか、タイルがどうもきれいに貼られていない。
タイル屋は下地が悪いというし、下地は大工仕事だし・・といった細かな不具合が目につくことがあります。
いわゆる『呼吸』があいません。

少しは『モラル』も低下するでしょう。

下の写真は、CM方式で捨ておかれた床下のゴミですが、いつもは工務店の現場監督がうるさいので、その都度キチンと掃除をするのですが、CM方式の建築士なんて、忙しくってそうそう現場になんかいませんから、ついついゴミをほったらかす。誰の心にも起きるちょっとした手抜き心理。

上の2つが下請心理に微妙な影を落とすのでしょうか・・・。
もちろん、モラル無き元請け工務店の仕事も大変醜いですが、CM方式のモラル管理も相当の手腕が要求される代物です。

さて、プランやデザインが大好きな建築家にそういう「手腕」はどこまで備わっているのでしょうか。

結局のところ、こういった数字や図面に現れない問題を何らかの方法で克服した建築家の建物は問題なく引き渡しを終えますが、そうでない建築家に依頼した人は、「小さな不満を一杯抱えたまま、工事の引き渡しに立ち会う羽目になってしまいます。」
注:「」は、私がCM方式のトラブルのご相談に対処する中で抱いた感想です。

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