内部結露は、断熱・気密化の弊害
もし、明治大正時代の建物のようにすきま風が入り、外気温が0℃になっているとき、火鉢ひとつで暖を取り、室温がわずか5℃であれば内部結露など起こりようがありません。
外気温が0℃の時でも、室内は20℃近い室温にして快適に過ごしたいと要求したために内部結露というものが生まれてきました。
前項の「内部結露が心配」でも少し述べていますが、内部結露は、人間が快適な生活を過ごしたいがために断熱・気密化を進めた結果起こっている現象なのです。
よく、内部結露を防ぐためには防湿層を設けなさい・・・という話を聞きます。防湿層とは、文字通り湿気を遮断する層のことです。理論的に事実ですが、では、実際の建物はどうなっているのでしょうか?
ここでは、2つの実験をまず、ご紹介しましょう。
セルロースファイバー
新聞紙を原材料にして作られた木質繊維系断熱材で、壁の空間に吹き込みながら入れていく工法で施工されます。
実験-1(防湿層を設けないと結露するのか)
平成12年に防湿層を設けない方法で内部結露が発生するかどうかを行った実験があります。(財)建材試験センターが行った実験ですが、右の図のようにひとつはグラスウール(16K)を壁内に充填し、外壁側に通気層だけを設けた試験体と、もう一つは壁内にセルロースファイバーを充填し、外壁側に合板などの面材を貼った試験体の2つを用意しました。どちらも室内側に防湿層は設けていません。
条件は、室内温度20℃。湿度60%、外気温はグラスウールは-5℃、セルロースファイバーは外気温0℃です。
その結果は、防湿層の無いグラスウールでは内部結露が発生せず、防湿層は設けられていないが、外側に面材として合板を張った場合は24時間目頃から結露が発生し始め、ダイライトを張った場合は、96時間目から結露が発生しし始めたと報告では書かれています。
注:なぜ、合板とダイライトで結露発生時間に差が生じたのか。それは、次のページで解説しています。
実験-2(防湿シートの隙間と透湿の関係)
究極の省エネルギー住宅をめざし、国が音頭を取って実験したR2000計画の実験のなかで、隙間があればどの程度透湿性に影響があるかを実験したものがあります。
それは、穴の空いていない1mX1mの室内仕上げに使う石膏ボードと、同じくその中に2cm角の穴を開けた石膏ボードの2つを用意して一冬にどれだけ石膏ボートが湿気を通過するかを行った実験です。
結果は、穴の空いていない石膏ボードは一冬で1/3リットルの水分を通し、穴の空いた石膏ボードは一冬に3リットルの水分を通しています。つまり、わずかな隙間があるだけでも10倍の水分を通過させていることを実験が示唆しています。
そして最も大事なことは、風など絶対に通さないと思える合板でさえ、実は目に見えない湿気は楽々と通っていることなのです。