工事のために、隣の敷地に入ることが出来るのか。
この命題には、民法第209条が答えています。
境界近くの塀を直したり、住まいを新築、あるいは修理するために、必要な範囲で隣地に入らせてもらうことは出来ます。でも、隣家(住まい)に入る場合は、相手の同意が必要で、相手の承諾が無い限り、勝手に、隣家(住まい)の中に入ることは出来ません。
また、相手が、あなたの工事によって損害を受けた場合は、隣人は損害賠償を請求することが出来ます。
他の条文で、建物は敷地から原則50cm以上離しなさい(民法第234条)という規定がありますが、少なくとも住宅地では、建物の修理をするために隣地に入る必要があるほど 敷地一杯に建物を建て、隣地の人と折り合いが悪いと、いざというときにトラブルとなる場合も出てきますね。
民法は、工事のために、必要な範囲で一時的に、隣地の使用を認めていますが、それは、良好な人間関係あってのことですからね。
第209条
土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕する必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。
ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
2)前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
注記
相手が拒否した場合は、調停によって、妥協点を探るか、あるいは裁判を起こして、裁判所に足場などの設置の承諾を求める訴訟を行い、必要な範囲などの承諾(判決)をしてもらいます。
でも、このような方法はお勧めできません。仮に調停や判決で立ち入りが許されても、感情的なしこりがついて回り、工事中も完成してからも新たな問題が発生する可能性大です。
いくら民法上認められた権利とはいえ、出来れば自分の敷地内で工事が出来たり、いざというときのための良好な人間関係の形成が必要でしょうね。
また、工事人によっては、断りも無しに、平気で他人の家の屋根に上がったり、屋根の上に足場を掛けたりする人がいますが、これもトラブルの元です。隣人が損害を受けた場合は、損害賠償を請求されかねません。