前ページでは、柱を彫り込んでいるために、どうしてもその部分が弱くなる。その弱点をカバーするために柱寸法を1ランクわざわざ大きくしている、という通し柱の弱点を説明しました。
そのような弱点を根本的に変えたのが、「柱埋込金物工法」という工法です。
注:格別定まった名称があるわけではなく、単に「金物工法」と言っている場合もあります。
この工法は、柱も梁もほとんど彫り込まず、専用金物とドリフトピンという短いボルトだけで柱と梁、あるいは柱と土台などを固定しようとする工法で、クレテック工法、ナックル工法、SSマルチ工法等々、金物メーカーが各社各様の名前をつけていますが、全て理屈は同じです。
この工法の最大の特徴は柱と梁などの接合部の強度を強くすることが出来ます。
さらにホールダウン金物など、軸組工法では必要に応じて耐震金物が随所に必要になってきますが、これらの工法では埋込金物自体が耐震金物を兼ねていますから、二重に金物を設ける必要がありません。
つまり、耐震性の面で言えば、計数的にいくら良くなるとは数値化できませんが、在来型の方法よりもより安定した耐震性が確保できると考えられます。
その反面、
- ややコスト高であること、
- どのプレカット工場でも扱っているというわけではないこと、
- 無垢材ではなく集成材に限定されている金物もあること、
- 基礎に金物を直接固定する工法の場合は、アンカーボルトのセットに高い精度が要求される
といったことから、耐震上有利な工法ですが、これらが足かせとなり、まだまだ普及はしていません。
写真は、タナカの「SSマルチ工法」の例です。
柱の段滅欠損がほとんど生じず、柱の強度をそのまま生かすことが出来ます。
その代わり、アンカーボルトの制度が要求されたり、少しコストが上昇します。
大手ハウスメーカーでは、このような金物工法と在来型工法とが半々ぐらいで行われているのではないでしょうか。そして、中小規模の住宅会社になるとほぼ1割程度しか普及していないようです。それでも大きな規模のビルダーでは、この工法は積極的に取り入れられつつあります。