買い控え、選別淘汰のできない業界
小さな会社という点では、農家や街の小さな小売店、飲食店も家内工業的に行っているという点では同様ですが、少し違う側面があります。
それは、味のまずい飲食店、古い商品を平気で売っている商店といったものは、一度買ってしまっても、その次からその店を利用しなければよい。また、質の悪いものしか生産しない農家、町工場といったものでも、仲買人や取次店、商社といった流通過程で選別され、結果として消費者に手に届くことはありません。
つまり、悪い商品やサービスがあっても、前者は消費者が買い控えをするという自衛策をとれば良く、前者は市場の流通過程の中で淘汰されていきます。
しかし、住まいは前者のように1、2回商品を買って悪ければ違う店に移る、というタイプのものでもなければ、仲買人や取次店があり、誰かが良い商品か、悪い商品かを選別してくれるものではありません。
上の図でもわかるように、私たちが日常行っている消費活動のほとんどは、生鮮食品のように中間の取次店で選別されるか、雑貨、衣料、日用品、家電製品のように生産者が品質管理をして、消費者の手に届くまでに品質が揃った製品や商品が揃えられています。
しかし、住宅は生産者である住宅会社と直接契約することになります。
消費者(建築主)と生産者(住宅会社)がたった1回だけの契約で、しかも人生の中でもっとも高額な取引行わなければなりません。
つまり、今までの消費活動とは全く違うことなのだ。ということを消費者自身が自覚する必要があります。
消費者の力の及ばない業界
雪印乳業は牛乳の品質期限の不正で会社を整理することになってしまいました。三菱自動車はリコール隠しで売上高が半減する危機に見舞われています。
でも住宅業界では欠陥工事をつくろうと、裁判で負けても、その会社が、その設計者が倒産するも、免許を取り上げられることもありません。1つ1つの消費(購買金額)は高額でも、悪いことが多くの人に伝わらない特有の産業構造でもあるのです。
それは、誰もが毎日使う商品ではなく、一生に1回しか買わない特異な商品だからなのです。