欠陥住宅や手抜き工事といった言葉をよく耳にしますが、恒常的に発生しているこれらの現象には、住宅業界特有の産業構造が大きく作用しています。
上の左図は、首都圏の住宅シェアの比率を示していますが、年間施工棟数100棟以上の会社の件数シェアは、50パーセント越えありますが、反対に年間施工棟数100棟未満の会社も半分近い比率を占めています。
また、右の施工棟数別の会社の数では、年間施工棟数が10棟にも満たない会社が8割以上を占め、さらに、年間施工棟数1~4棟未満の会社は全体の50%を占めています。
つまり、住宅業界は、自動車や家電製品、多くの日用品のようにわずか数社が日本全体のシェアのほとんどを競い合っているような業界ではなく、年間施工棟数がわずか10棟以下の小さな会社から、年間1000棟以上施工している大きな会社まで、実にさまざまな会社が住宅工事を行っている現実があります。
それは、建売業者もあわせれば、(財)住宅保証機構の登録業者だけで41,000社(平成17年4月現在)にものぼり、JIOなど、他の保証機構だけに登録している業者も含めれば、その数は全国に数万以上の会社があることがわかりますね。
言い換えれば、家電製品のように限られた大企業が市場のほとんどのシェアを競い合う世界ではなく、零細企業から大企業まで実に様々な企業が競争を繰り広げている業界特有の産業構造があります。当然、そこに建物の品質や性能面の格差や、施工上の瑕疵が生まれてくる土俵が自ずから存在しているのです。
いままでこのサイトでは、建築会社という表現を多く使っています。住宅産業ではハウスメーカー、工務店、ビルダー、建売業者、不動産業者等々、いろいぬろな表現がありますが、工事や設計をする会社を総称して建築会社という表現を使っていました。
しかしこの章では、土地売買を含めて建物を販売したり、供給する建売系の不動産業者から、注文住宅を主とするハウスメーカーや工務店のすべてを総称して住宅業界、あるいは住宅会社としてひとくくりに表現しています。
それは、これから述べることが単に不動産業界特有の、あるいは建築業界特有の、といった分類ではとらえきれない、住宅を供給する業者全般に言えることだからです。