耐震性に関係して、『土台や柱は太い方がよいのではないか』という疑問を抱く人も多いのではないでしょうか。
たしかに、一部の工務店などでは、柱の全てを4寸角で作り、「耐震性も高くなる・・」といった触れ込みで太い柱を「売り」にしている会社があります。
では答えはどうかというと、『柱が太くなれば耐震性に寄与するのはその通り、しかし、現在の住宅ではほとんど関係がない』というのが結論です。
それは次のようなことが理由になっています。
105~120mm角の柱では耐震性向上の効果は極めて少ない
土台や柱は建物の重さを支えるために、太ければ太いほど良いとは言えますが、耐震性に関してはあまり関係ありません。
といっても、これは3寸5分(105mm)や4寸(120mm)と言った現代の住宅で例外なく使われている柱を使った場合の話で、この程度の寸法の柱では、ほとんど耐震性に寄与しないとされています。
140mmで多少の効果。240mmで効果大
しかし、この柱の寸法を140mm以上の太い柱にすると、少しづつ耐震性にも寄与して、柱の寸法が240mm(8寸)程度にまで太くなると、その柱だけでも耐力壁として十分な強さを持っています。
柱と梁が太いことと、それらが強く噛み合わさっていることで、「ラーメン構造」的な感じで耐震性に寄与できるようになるのです。
注:ラーメン構造というのは、柱と梁がしっかりと結合されて、その結合部が決して変形しない状態の構造。軸組工法は柱と梁が組み合わさっていますが、地震時には変形するので、形はよく似ていますがラーメン構造ではありません。ラーメン構造の代表例は、鉄筋コンクリート造です。
筋交いと比較すると
そして、その強さの程度を筋交いと比較すると、下の図のようになります。
片筋交い(45X90)の倍率(強さ)は、2という単位ですが、柱の寸法が140mmになると、約0.5の強さとなり、柱の寸法が240mmになると、約1.2の強さになります。通常、今の住宅で使われている105mm角や120mm角の柱の強さは、この表の推定では、せいぜい0.2程度ではないでしょうか。
そうすると、柱が10本集まって、やっと筋交い1本分程度にしかならないのですから、耐震余力としては考えられても、本格的な耐力壁としてカウントしていくには無理があります。
つまり
柱が140mm程度を越えれば、少し耐震性に寄与よる。柱の太さが240mmになれば大変寄与すると考えられますね。240mmの柱2本で、片筋交い1本よりも強くなります。
でも、現代の住宅で主流である105mmやそれよりも少し太い120mmの柱では、多少の強さがないとは言えないものの、数値の上ではあまりに小さすぎて耐震性にはほとんど影響を与えないと言えるのです。
確かに柱を140mmや240mmにするなんて、そもそもそれだけ太い部材を集めるのも大変ですし、費用も莫大になってしまいます。
神社仏閣が地震に強い理由
よくよく世の中を見回してみると、大きな地震があっても、その地域の神社仏閣が倒壊などの大きな被害を受ける-お寺や神社が倒壊してしまいました-なんてことはあまりありません。昔の建物ですから筋交いすらありませんし、土壁で、今で言う耐力壁などありません。しかし、一様に柱も梁も太いのが特徴ですね。
つまり、土壁の粘り強さと相まって、太い大きな柱や梁が耐震性に寄与しているために、いわば華奢な現代住宅よりも案外丈夫なんだとも言えそうですね。