その方はきっと、親鳥が雛を慈しむように、大事に大事に、一生懸命家造りをしたのでしょう。
その家は、床はケヤキか何かの無垢のフローリング。壁はしっくい。天井は桐の無垢材。建具ももちろん、全て無垢材を使用し、人工建材は一切使っていません。サッシも木製です。
徹底的なこだわりぶりです。
私も杉板の天井はよく見ますが、桐の天井板は見るのも初めてです。珪藻土は多いですが、しっくいは珍しいですね。
(ただし、外観はサイディングです。屋内だけが徹底的なこだわりです)
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そのためか、実は、部屋の温度が一般的な家よりも低いです。
そして、基本的に冷暖房は最小限に・・という考え方の方ですから、私が訪れた11月でも、ストーブが欲しいほど部屋は冷えていました。
その家は築1年ほどで雨漏りがありました。
比較的大きな雨漏りで、室内側にも雨水が流れ込んでいました。
しかし、問題はここからで、その方は床、壁、天井の所々に見える跡形が、雨漏りのあとであると主張します。調停をしているのですが、直す範囲でもめたため、私に調査の依頼があったのです。
確かに調べてみると、ところどころに本当に小さい面積ですが、結露を起こしたあとの水跡のようなものが残っています。そして、その方は雨漏りのせいだ・・と強硬に主張し続けます。
しかし、雨漏りが起こった外壁側から2mも離れた場所で、しかも、階段の裏側にほんの1cm程度の水跡も、「これは雨漏りの跡だ」と言い張ります。外壁からその水滴まで、雨が流れていった形跡はありません。(右の写真はイメージです。実際の階段は踏み板だけのオープンな裏も覗ける構造です)
推測ですが、部屋の温度が普通の家よりも低いために表面結露を起こし、その痕跡なのでしょう。
しっくいなどを使うと、湿度は吸うのですが、室温は低くなります。木材も湿度を吸うと、室温が下がります。けやきの床板などは、もともとの表面温度が低いです。そのため、材料の表面温度は他の家よりも低くなり、少しでも暖かい空気が侵入すると、他の家よりも表面結露が起こりやすくなります。
朝10時から夕方4時頃まで、昼飯もとらず、延々と
「雨漏りの跡だ」
「そうではありません。結露です」
という押し問答を続けていました。
そして、あまりに自説(全て雨漏りのせいだ)にこだわり続けるため、説明も説得も不可能と思い、話を打ち切り、出張料金も請求せず、その場を退散しました。
この方は、客観的にみれば、決して雨漏りではなく、結露だと疑われるのに、どうして「雨漏り」に固執しているのでしょうか。静岡からの帰りの新幹線の中で考え続けていました。
(新幹線代も、結局自腹ですが・・・)
私が見つけたその答えは・・・。
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